High and dry

それが魔法というものなら 死ぬまで解けないかも

花よりもなほ(是枝裕和/2006)

花よりもなほ 通常版 [DVD]

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——元禄15年、江戸。
世間は生類憐れみの令が出ていた泰平の折、青木宗左衛門は父の仇を討つべく上京して3年が経っていた。ところがこの男、剣の腕前ががからきしダメなへっぴり侍だった!
愉快に暮らす長屋仲間の大騒動に巻き込まれ、『忠臣蔵』で名高い赤穂浪士の仇討ちとも微妙に絡み合い、事態は思わぬ方向へ。

宗左衛門の仇討ちのゆくえやいかに……!?

是枝好きとしても加瀬好きとしても、よくも今の今までこれをスルーしていられたな……かんっがえられへん! とキム兄よろしく過去の自分に駄目出しをしたい。




是枝監督だから集められたのですね…! と思わずにいられない豪華な俳優陣。
主演の岡田くんをはじめ長屋に暮らす面々がメインキャストなわけだけど、その他のキャストも、え! この人も出ちゃうの!? なベテラン勢一挙出し。俳優たちの得意分野がさりげなく光るキャスティングと演出で、それが岡田くんの控えめなお芝居ときれいに混ざり合って、とても心地良く観ました。
是枝監督は主役も脇役もなくすべての登場人物に等しく愛情を注ぐ人だから、エピソードの中でメインになったりしなくてもどこかしらに必ず「美味しい」場面なり台詞なり演出がある。だから観ているうちに登場人物全員に愛着が沸いてしまうんです。

んで、とにもかくにも加瀬亮ですよ! そで吉ですよ!!

そでさん…ちょうかっこいい…!!!!(号泣
紫色(ピンク?)の着物が軽薄で色っぽくて素敵です最高です!(白旗

そで吉という男は哀しい人でね。
幼なじみでかつての許婚であるおりょう夏川結衣)との微妙な駆け引きというかそで吉の心の動きがね…すっごく人間臭くて切なくていいんですよね……目の動かし方とか顔のこわばり方とか、俯いた顔とか、もーーー、なにもう、なにあれ。すばらしく良いな。ていうかどっちからでもいいから抱きしめちゃえよ! いっそのこと! なんて思ってしまったよ。でもそれが出来ないもどかしさ。しない優しさ。

そして、そんなそで吉をひそかに想っているおのぶ(田畑智子)とのやり取りもまたたまらんのです。甘酸っぱいとはこのことですよ。『ハチクロ』なんぞで甘酸っぱさを味わったってしょうがないんですよ!!*1 この二人のその後も見たかったなあ。

ああ。
わたしもそでさんに「そでさんは好きな人とかいないの?」って聞いて、「いると腹でも膨れんのかい?(笑)」って軽くあしらわれたい!!

*1:「甘酸っぱい」でほぼ同時期に公開したこちらも思い出してしまった。