High and dry

それが魔法というものなら 死ぬまで解けないかも

「No.9‐不滅の旋律‐」を観ました

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スマオタ大絶賛の嵐にいてもたってもいられなくなり、2日前にチケットを入手して観て来ました。

す、す、素晴らしかった……。

吾郎さんのベートーヴェン、いや、あれは吾郎さんの音楽。そしてカンパニーの音楽。
キャスト、脚本、演出、照明、音楽……すべてが溶け合ってひとつになって胸に迫ってきて、心が震えた。人と人は、互いの心が響き合うとき、音楽を奏でているのかもしれないなあ。とか、気を抜くとすぐポエムってしまうくらい良かった。ほんとうに良かった。思い出すと泣いてしまう。

ああ、すごいすごいすごい!ものすごい舞台を観てしまった!!

以下、一応ネタバレということで、これから観劇される方は回れ右でお願いします。



ベートーヴェンの耳が聞こえなくなり始めてからの後半生を描いた、彼と彼を取り巻く人々の群像劇。
史実と創作を織り交ぜながら天才作曲家の苦悩と成功と人々の心の機微を丁寧に描いていて、そうしてクライマックスの『第九』、「歓喜の歌」の合唱へとなだれ込む、あのカタルシスったらない!

人と人とが関わり合うことは、音楽が響き合うことにとても似ている。

このお芝居は、舞台の両端にピアノが計3台あって劇中音楽の大部分をその生演奏が担っているのだけど、2階席からは演奏している様子がはっきりと見えてすっごく楽しかった。登場人物の喜怒哀楽に寄り添うように3台のピアノが呼応し合って、あれは目にも耳にも贅沢。

それからそれから、照明が! 光の演出がものすごく美しかったです。2階席は、舞台に差し込まれる、映し出されるそれがつぶさに見えて、ああ今のこの画をこのまま切り取って眺めていたいのに、と思う場面がたくさんあった。画として綺麗なだけじゃなくて、まるで光にまで感情が乗っかっているようなの。感動しっぱなしでした。

一幕の終わりごろだったかな、うろ覚えすぎるにも程があるのだけど、こんな感じのセリフがあって。

……ピアノはいいな。
弾けば必ず音が出る。バイオリンだってホルンだってそうだ。
きちんと向き合えば、きちんと応えてくれる。

人間は難しい……。

誰にともなくつぶやくように話すその声が、最後の箇所で涙声になるベートーヴェンが、せつなくて、いじらしくて……。

実在した有名すぎるほど有名な人物を演じるは、観る人それぞれの中に知識やイメージの積み重ねがあるから「こんなのは正しくない、本当の○○じゃない」なんて言われたりもするし、時にリスキーだなあと思ったりもするけど、あそこにはいたのは紛れもなくベートーヴェンだ。ベートーヴェン「っぽい」人、じゃなかった。

とんでもない熱量で日々ベートーヴェンを生き、時に6日間連続でステージに立つ吾郎さん。休演日には丸一日スマスマの収録をこなす吾郎さん。料理を作り、歌い、コントをし、中居さんのフリを見逃さず的確にボケてみせる吾郎さん!
ハンパない……SMAPハンパないわ……。

そしてもう一人のお目当て、片桐仁さん。
胡散臭くてお調子者の発明家メルツェルは、掴みどころがなくてなんだか怪しいのだ。でもそんな人物も、片桐さんの手にかかるととってもチャーミングで憎めない、愛すべき人になるのです。メルツェルかわいかったなあ。

このままキャスト全員分語ってもいいのだけど、とりあえずこれにて。
ああ、ほんとうに素晴らしかった。


「諸君、喝采を。喜劇は終わった!」(号泣)