シアタートラムで舞台「バリーターク」を観てきました。
ネタバレはしていないと思うけど、これから観劇予定の方は読まないほうがいいかも。
劇場のHPより、あらすじはこちら。
広い部屋。
そこに2人の男がいる。
彼らは目覚まし時計の音で起き、
80’sの音楽を聞きながら、
部屋をかけまわって着替えて食べて踊ってフィットネスをして、
バリータークという村の話を語る。
ふたりはだれか。
どこにいるのか。
そして壁の向こうには何があるのか?
前情報で難解と聞いていたので多少身構えていたけれど、難解と言われるのはここはどこで彼らは誰で何をしているのかが説明されないからで、それならばあまり気にせず一切を委ねてしまおうとリラックスして観ることにした。
結論から言うと、すっっっごく面白かった…!いかようにも解釈できるというか、終わるけど終わらない結末もめちゃくちゃ好み。余韻が深い。
バリータークについて語り合うことはふたりの日課のようで、そのやり取りはとてもコミカルでチャーミング。それにしても彼らはいつからここにいるのか、ここから「出ない」のか「出られない」のか…小さな違和感が積み重なった頃、謎めいた<男3>の登場によって物語のトーンはグッと変化する。
これは生と死を巡る物語。
なぜ生きるのか、生きるとは何かという普遍的な問いに直面することで、架空の世界の物語が一気に「わたし」の物語になる。
わたしは、わたしたちは、なぜ今ここに生きているんだろう。どこから来てどこへ行くんだろう。わたしの中にもきっとこのだだっ広い部屋はあって、いつかバリータークの話をするかもしれない。
劇場から外に出たとき、帰りの電車を待っているとき、<男1>(草彅剛)の最後の後ろ姿を思い出して、じっと自分の足元を見つめた。踏み出したこの足はどこへたどり着くだろうかと、途方に暮れてしまった。ああ、なんだこれやばい。めちゃくちゃ引きずる!
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舞台に立つ草彅剛を観たのは初めてです。つよぽんはほんとうに身体能力が高いな!跳んだり走ったり舞台上を文字通り駆け回りながらノンストップの1時間40分。膨大なセリフ量に加えて運動量も相当なものだけれど、髪の毛から上半身から汗びっしょりで躍動する身体が、その立ち姿が美しくて見とれてしまった。力強いのに軽やか。全身に高性能なバネが入っているようだし、背中には羽が生えているようだった。実際、舞台の序盤、肩甲骨の形に沿ってTシャツに滲んだ汗が羽に見えたんだよ…ほんとだよ……。
そしてとにかく声が良い!良すぎる〜!ドラマや映画で散々聞いてきたそのどれよりも生で聞く声が魅力的だった。地の声の良さ、抑揚の効いたセリフまわしに声色の多彩さ、最初から最後までやられっぱなしだった。つよぽんの声大好き。あれは宝物だね。
相方の<男2>の松尾諭さんとのコンビネーションも抜群。松尾さんが舞台はこれが2本目だと知ってすっごく驚いた。なんだろう、あの絶対的な安心感と安定感は。松尾さんもやはり膨大なセリフ量と運動量で、この芝居を2ステージやる日もあるわけだから役者さんというのはほんとうにすごいな…。
闖入者である<男3>の小林勝也さんも声が良すぎるしミステリアスだし説得力の塊で、こちらもほんとうに素晴らしかった。3人のシーン、物語の結末はおいといてずっと観ていられるな!と思った。
つよぽん、1~2年に1本くらいのペースでこれからもたくさん舞台をやってほしいな。もっといろんな作家や演出家の作品でつよぽんを観たい。チケット争奪戦を思えば映画のほうが心は安らかなんだけど、つよぽんは舞台に立ち続けないと。たまにじゃもったいないもの!